全国の求人・転職 > 2016〜2017 はたらいくの転職市場予測 > 物流・運輸・設備の市場動向
2016年の物流・運輸業界は燃料高も落ち着きはじめていることもあり、業績は上昇傾向にあります。景気回復により個人・法人を問わず輸送量は増加していますが、特に影響を与えているのは、インターネット通販による個人物流量の増加でしょう。国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)の市場規模は成長を続け、2014年には12.8兆円となり、2018年には20兆円を超えることも予測されています。物流・運輸業界はそのEC市場の基礎となるものであり、ともに成長を続けることが期待できるでしょう。個人向け物流を支えるトラック運転手を中心に物流業では慢性的な人材不足が継続しており、厚生労働省の調べでは2016年1月時点の「自動車運転の職業」の求人倍率は1.87倍でした。この先も売り手市場は継続が予測されます。
また、物流・運輸業界への転職で注目しておきたいのは物流に関する業務を一括受託する3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)化による業務拡大の流れです。従来の物流業の配送や保管たけでなく、包装などの流通加工、配送時の顧客対応などへ業務を拡大してきています。そのため幅広い人材が求められており、異業種からの転職も有利に進めることができるでしょう。さらに、大手インターネット通販事業者自身が自社物流を導入する動きもみられ、新たな雇用創出の機会と期待されています。
物流・運輸業界では業務拡大により業務が広がる一方、慢性的な人材不足は深刻です。道路貨物運送業を例にとると、就業者数は毎年180万人前後で推移しています。しかし40代〜50代の中年層の占める割合が全産業では34.1%であるのに対し道路貨物運送業では44.3%(トラックドライバーの人材確保・育成に向けて/国土交通省)と高く、将来的には高齢化によるさらなる人材不足が懸念される状況です。加えて長時間労働などの雇用環境もあり、若年層や女性の就業者の確保が難しいといわれています。そのため、現在では行政や関係団体により、環境の改善に向け、積極的な取り組みが行われるようになりました。道路交通法の改正による準中型免許新設もそのひとつでしょう。
一方で企業の業務拡大は続いているため、今後も当分の間人材不足が見込まれます。業界のコンプライアンス遵守の動きから、新たに安全管理などのマネジメント能力のある人材も求められるでしょう。
さらに3PL事業者では、顧客によって、ある程度の専門性を持った人材が求められることも考えられます。これまで倉庫管理や配送のみを行ってきた企業では社内人材でカバーしきれない部分が発生しますので、積極的な採用を行う動きがみられます。
物流・運輸業界に求められる人材像としてあげられるものは、まず安全に業務を遂行できる人物であることです。日々の業務は正確に事故が無いように、スピーディーに行わなければなりません。現場で荷降ろしなどが発生する場合には重い荷物の持ち運びに耐えられる忍耐力が求められることもありますが、必要な資格を保持しており誠実に業務に取り組める人物であることが条件です。チームで行う業務に携わる場合には、進捗管理能力やマネジメント能力も重視されますので、これまでにプロジェクトを指揮した経験がある場合はアピールポイントとなります。3PL事業やIT化も進んでいますので、情報やシステムの管理能力も重視されるでしょう。
また、業務の拡大により、自社内だけでなく取引先企業や顧客と直接接触する仕事も増えています。顧客対応が発生する3PL事業はもとより、特に近年市場が拡大しているシニア向けサービスにおいては、きめ細かい視点と優れたコミュニケーション能力が必要です。顧客のニーズをいち早くつかみ提案する能力だけでなく、顧客の気持ちになり寄り添うケア的視点も求められます。物流・運輸業界の中でも特に異業種の経験を生かすことができる業務で、多くの方が活躍しています。
3PLとは、物流企業が荷主から、荷物の配送だけでなく物流戦略の企画やシステム構築の提案を行い、運送から保管、在庫管理や周辺サービスを個別のサービスごとではなく、一括で請け負うことをいいます。3PL化を進める動きは、荷主となる企業も物流企業にも高まっています。3PL化のメリットは、荷主となる企業側では生産と販売に集中でき、物品の管理拠点を一か所に集中させることでコストダウンが図れることです。3PL事業者側では業務拡大が可能となり、売上や利益の向上が図れます。物流業者では3PLを担当することにより、配送や倉庫内作業だけでなく組立作業や顧客対応などの新しい業務も発生しており、業種の幅を超えた対応能力への需要も発生しています。
国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)は市場拡大を続けており、2014年度には12.8兆円規模にまで成長しました。その要因のひとつがインターネット通販です。総務省の平成26年情報通信白書によると、インターネット利用者の半数以上がネット上での「商品・サービスの購入・取引」を行っています。インターネットの利用率はスマートフォンの普及も後押し上昇を続けており、大手プラットフォーム企業の成長も続いていることから、今後も市場拡大が期待できるでしょう。また、インターネット通販の事業者は他の事業者とも差別化を図っており、スピード配送など多彩な配送サービスの設定にともなって運輸業界にも新しいニーズが求められている状況です。さらには自社物流を開始する企業もあり、新たな人材需要を生み出す動きもあります。
物流業におけるドライバー不足は慢性的で問題が叫ばれてきましたが、景気回復による物流量の増加でますます不足感が増しています。ドライバーは平成21年度より有効求人数が上昇を続けており、平成28年1月の有効求人倍率は2.33倍(厚生労働省/一般職業紹介状況)と非常に高い状況です。また、ドライバーの就業者年齢構成が他の業種よりも高く若年層の割合が少ないことから、長期的には高齢化によるさらなる人材不足が予測されています。そのため、ドライバーの労働環境の改善や3.5トン以上7.5トン未満の運転が可能となる準中型自動車免許の新設など、行政、業界両面からドライバー確保へのはたらきかけが行われています。転職を希望している方には有利な状況が続くでしょう。
個人向けのサービスの中で注目され需要が増加しているのがシニア向けのサービスです。設備業界では、シニアの単身生活者に対するホームセキュリティサービスの分野が成長を続けています。日常の防犯対策や緊急時のサポートだけでなく、見守りサービスや定期的な訪問サービスを提供している事業者もあり、離れて暮らす家族からのニーズが高いです。また日常の買物が困難な方のインターネットを通じた購入支援や、定期的な食事の配送サービスなども引き続き好調に推移しています。これらのサービスには運輸・物流が大きく関わっており、企業にとっては新たな参入や業務提携なども見込まれる分野です。宅配と注文取次を一体化したサービスも開始されています。
運輸業界、特に中小企業のトラックドライバーにおいては長時間労働や契約外の付帯作業の要求、賃金が低いことなどの労働環境が問題視されてきました。これに対し厚生労働省は中小企業に対する時間外労働に対する割増賃金率引上げを含む改正労働基準法の国会提出(平成31年4月1日施行)、国土交通省はガイドラインによる適正取引の推進や不適正な事業者への指導強化やなどの取り組みを行っています。またトラック運送事業者、荷主、行政、関係団体が参加し取引環境・労働時間改善をめざす「トラック輸送における取引環境、労働時間改善協議会」が中央と各都道府県に設置されました。地域の実状に即し、長時間労働の抑制と取引環境の改善などの労働条件の改善を進めています。