豆源は慶応元年(1865年)の創業。豆の持ち味と風味を守る製法で豆菓子の味覚を追求してきた、麻布十番に居を構える豆菓子の老舗です。”豆やの源兵ヱ“さんと愛称された初代駿河屋源兵衛が、煎り豆を肩に、屋台荷車を引き歩いたのがはじまりです。おとぼけ豆やおかきをはじめ、人気の豆菓子や米菓を製造・販売しています。そんな豆源本店を預かり、おかきや豆菓子の製造を行っている、星野夏男さんにお話を伺いました。
星野さんは現在56才。出身地である新潟で就職しましたが、家族が全員上京したため、会社を辞めて東京へ。すぐには仕事が見つからない中、知人の紹介で豆源に入社しました。当時は10人に満たない、家族のような会社だったそうです。
商品を作り、その傍ら販売する。また商品を作って、販売する。即戦力として、入社2日目には豆菓子を作り始め、毎日が忙しく、悩み迷う暇もなかったと言います。
習うより慣れろ。先輩に製造方法を説明されたら、あとは実際にお客さまの口に入る商品を作りながら、豆菓子作りを身につけていきました。「材料のこともありますから、失敗できない。そんな緊張感をもって豆菓子づくりに取り組んできました。」人気商品のおかきは、揚げる前の餅の状態が天候に左右されます。その日の様子を見て、材料を取り出すタイミング、揚げ方などを調整します。こうした微妙な加減を計る感覚は、経験を積む中で得ていきます。
「いいものを作りたいという思いがあります。そのために、入社当時に先輩に教わった昔からの製法で、教わった当時の感覚を大切にしながら作るよう心がけています。」
36年、豆菓子を作り続けて来れたのは、「座って事務作業をするより、現場で身体を動かす方が向いているという性格が向いているからではないでしょうか。」と星野さんは言います。
大きな鍋を回す豆菓子づくりには体力が必要です。はねた油でやけどすることもあります。しかし、それでも後輩達へは、「まずは製造という業務にチャレンジしてほしい。」と言います。自分で作るからこそ、喜ぶお客さまの顔も格別です。
豆源本店が居を構える麻布十番は、バブル期を挟んだこの30年余で大分様変わりしました。星野さんは、以前の様子を知る数少ない一人です。田舎へ引っ越したお客さまが遊びに来た際の、「豆源さんは変わらないね」という笑顔や、ご両親に連れられて来ていた子供が、大人になって買いに来てくれることが、星野さんにとって大きな喜びなのです。
企業情報: 株式会社 豆源 / 問合せ先:03-3583-0962