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はたらいく 職人という生き方
  • 名前: 天野充雄さん
  • 職業:くず餅製造
  • 企業: 株式会社船橋屋

二百年ののれんの味を預かる、自負と責任

親方から次代へ「心をこめた」くず餅作りの心

「自分に残せるもの、それがくず餅作りだった」
「自分に残せるもの、それがくず餅作りだった」

「元々自衛官でした。自衛官を辞めて学校の先輩の紹介で船橋屋に入社してから、踏ん張りたいという気持ちがありました。」そう語るのは、くず餅の老舗「船橋屋」の工場長、天野充雄さん。現在49歳の天野さんが「船橋屋」に入社したのは20歳過ぎ。以来ずっとくず餅作りに携わってきました。
「仕事を辞めようかと思うこともありました。しかし、社長に相談したときに薦められた黒澤明監督の『生きる』という映画を観て、何か意味のあるものを残さなくてはいけないという衝動に駆られました。その時、くず餅作りが自分を、家族を支えていることに気がつきました。それからです。自分には『くず餅しかない』と思うようになりました。」

くず餅作りが<楽しい>と感じるのは、実際にさわった感触が狙い通りだったとき。蒸籠で蒸しあがったくず餅を手でさわり、その弾力を確かめるのは工場長・天野さんの大切な役割です。目指すのは柔らかいながらもはじき返す弾力で、この感覚を掴むのは、勘のいい人でも最低3年はかかると言います。「良いものを作るのは一生もの」。創業二百年ののれんを支える熟練の職人が目指す道に、ゴールはありません。

天野さんがやり甲斐を感じるのは、自分が生まれるより前からのお客様の「変わらない味」という言葉。初めてくず餅を口にしたお子さんの、「お母さん、これおいしい!」という素直な感嘆。なによりも嬉しいと感じると共に、ファンへの責任を新たにすると言います。

心をこめて作る価値。それは製品から伝わる。

天野さんは「心をこめて」作ることを一番大切にしています。親方から受け継いだその心は、一生懸命作った物は、製品からその思いが伝わるのだという信条から。その生真面目さからか、くず餅作りをしている時は「近づけない」オーラがでていると言われるほどです。

くず餅は飾りもなくたいへんシンプルです。いつもの材料、おなじ温度、変わらぬ工程。それでも日々仕上がりが異なるため、秒単位で蒸す時間を調整したりと細かな対応が要求されます。天野さんは「見て覚える、見て盗む」を求められた世代。先輩の仕事ぶりを観察しながら、自分でくず餅に触り、自分の感覚をすり合わせながら「見極める目」を磨いていったと言います。

時代が変わり、天野さんの仕事場での様子も徐々に変化していきました。「以前は、自分の気持ちをストレートにぶつけて、声を張り上げたこともありました。でも今は、相手の考え方や意見を踏まえて、接するようにしています。現場には必要以上には顔を出しません。方向性が合っていれば、ある程度任せます」と現場を見守るようにしているそうです。

「職人は『これでいい』と満足することはなく、謙虚さが必要です。仕事は<継ぐ>のではなく、<預かり、渡す>もの。伝えられたものを磨いて、次の世代により輝くものを作ってもらうよう<渡して>いくのです。」と後輩達を見つめています。

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