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はたらいく 職人という生き方
  • 名前: 青木誠治さん
  • 職業: 和菓子製造
  • 企業: 株式会社榮太樓総本舗

伝統に甘えず、挑戦し続ける和菓子職人の心と技

頑固なだけが職人じゃない 気遣いと柔軟性が流儀のベテラン職人

奥深い和菓子の世界に魅せられ、この道35年
奥深い和菓子の世界に魅せられ、この道35年

榮太樓總本鋪は、三角形の緋色や琥珀色の美しい榮太樓飴が有名な和菓子の老舗です。安政4年の創業以来、金鍔(きんつば)や上生菓子、あんみつとさまざまな種類の和菓子をつくり続けてきました。

なかでも金鍔は、創業当初からの看板商品で、機械で大量生産が行われるようになった今も、ある一定の量は昔ながらの手作業でつくられています。そんな伝統を守る現場に欠かせないのが、この道35年のベテラン青木誠治さんです。青木さんの菓子作りは、やさしく繊細でありながらも手早く力強いもの。普段は工場で菓子作りや後輩の指示を担う青木さんですが、時折百貨店で行われる実演販売では、お客さんに「綺麗」「美味しそう」と声をかけてもらうのが一番嬉しいと語ります。

「形だけじゃだめ。気持ちがないと美味しいものはできない。」

青木さんが「榮太樓總本鋪」に入ったのは中学を卒業してすぐのこと。初めから和菓子の職人を目指していたわけではありませんでした。「夜間の学校に通いながらの勤めだったので、家から近いのがここを選んだ一番の理由でした。」そんな青木さんが35年間続けてこられた理由は、和菓子づくりの奥の深さにあったと言います。当時、飴づくりは体力のいる仕事で体躯の大きい職人が多いなか、16歳で小柄だった青木さんは生菓子の制作に携わるように言われます。これが運命の始まりでした。「和菓子づくりは本当に奥が深い。ヘラを動かす回数1回でも味が変わるんです。形をつくるのは、練習すればできる。だけど僕と若い子がつくった菓子は、見た目は同じでも何かが違うんです。その違いを感じようとする気持や感性がなくちゃいけない。僕も先輩たちの仕事を見て、ああいう味を出せるようになりたい、とじーっと観察したんです。だから面白かったんですね。」

「先回りして気を使うこと。それがすべてに通じている。」

手づくりの作業を熟知した職人が減るなか、今青木さんは現場の指示進行など管理を任されています。入社以来大切にしてきたことの一つは、人に対する気遣いでした。かつては先輩職人に対して先回りして働き、今もスタッフに指導する際には細かい気配りを怠りません。「教える時も、自分のこだわりを押し付けるだけではだめです。相手によって癖もあれば考え方も違う。伝え方も十人十色。」状況に合わせて、ぱっと切り替え対応する柔軟性。それが、お菓子づくりにも、人を育てるにも欠かせない、青木さんなりの流儀です。

「教えるといったって、答えを全部教えるわけじゃない。自分で考えて感じる余地を残しておかないとお菓子は作れるようにはならないから。毎日同じことをやっていて嫌になっちゃう人は向いてないですね。終わりがないから面白いんです。」自分の目標を追求することにも余念がない。だからこそ会社からの信頼も厚く、新しい菓子制作のオーダーがあれば青木さんに声がかかります。

伝統を守る職人でありながら、柔軟に変化し、挑戦する。それが青木さんが名代の味を受け継ぎ、育て続けてきた秘訣なのかもしれません。

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